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割増賃金の見直しポイントを整理し解説します。
簡単な数値を使い、残業時間の削減効果をシミュレーションしてみます。
労働基準法によって、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間までと定められています。
これを『法定労働時間』といいますが、この法定労働時間を超えて残業を行った場合には、割増賃金を含めた賃金(時間外手当)を支払わなくてはなりません。
近頃は、割増賃金の不払いや残業代の不払い(サービス残業)の問題が各種のメディアで毎日のように取り上げられ、大きな社会問題となっています。法整備も着々と進んできており、割増賃金の割増率を段階的に引き上げようとする動きも見られるなど、残業代の取り扱いは企業経営にとって無視できないものになってきました。
ここでは、割増賃金についての要点を今一度整理・確認し、残業代の見直しを検討していくためのきっかけを掴んでいただきたいと思います。
残業を削減したとき、どの程度の人件費が削減できるか簡単に計算してみます。
ある労働者が毎日、法定労働時間を超えて残業を行っているとします。そして、この残業を少しずつ削減していった場合を考えてみます。計算をわかりやすくするため、1時間あたりの単価を1,000円としましょう。
法定労働時間を超える時間外労働に対しては、2割5分以上の割増賃金が発生します。割増賃金を含めた1時間あたりの残業代は1,250円ですから、この労働者の残業時間を毎週2時間削減できるとすると
1週間では・・・・・・・1,250円×2時間=2,500円
1ヶ月では・・・・・・・2,500円×4週間=1万円
1年では・・・・・・・1万円×12ヶ月=12万円
となります。そして、こういった労働者が10人いたとしたらどうなるでしょうか?
12万円×10人=120万円
なんと1年間で120万円の削減です。
10人の労働時間を毎週たった2時間減らすだけでパートタイマーが雇用できてしまいます。
(このパートタイマーは、年収を103万円未満に制限して働きたいと考えている主婦と想定しています。)
残業の削減によって生まれるメリットにはいろいろなものがあります。
残業時間の削減は、会社、労働者、社会全体にとっていいこと尽くめです。毎週1日は『ノー残業デイ』を会社全体、または部署全体で設定して、『残業=美徳』とされた今までの企業文化を一掃しましょう。
業種によっては、また、個々の会社の事情によっては、それほど簡単には残業を減らせないのも事実です。しかし、こうやって各社の実情に合わせて計算してみることは重要です。
ここでは、時間単価が1,000円の労働者で計算してみました。時間単価が1,000円ということは、週40時間制の勤務であれば約17万円の給与が支払われている人に相当します。
この2倍(約34万円)の給与をもらっている人なら、5人いるだけで毎週2時間の残業削減がパートタイマー1人分になる計算です。
法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働を行った場合は、割増賃金の支払いが発生します。
具体的な割増率は、時間外労働については2割5分以上、休日労働については3割5分以上となり、また、深夜労働についても2割5分以上となっています。
| 所定外労働の種類 | 割増率 | 備 考 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 0.25 | 1日8時間を越える労働 |
| 休日労働 | 0.35 | 法定休日の労働 |
| 深夜労働 | 0.25 | 午後10時~午前5時の労働 |
| 時間外労働+深夜労働 | 0.50 | 0.25+0.25 |
| 休日労働+深夜労働 | 0.60 | 0.35+0.25 |
| 休日労働+時間外労働 | 0.35 | 0.60ではない ご注意を! |
所定労働時間が7時間で2時間の残業をした場合、最初の1時間については通常の賃金を支払うだけで済みます。所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合は、法定労働時間を超えるまでは割増賃金が発生しません。
| Q. | 所定労働時間は7時間(定時が9:00~17:00、休憩が12:00~13:00)です。 1時間あたりの単価が1,000円の労働者が2時間の残業をした場合の残業代はいくら? |
|---|---|
| A. | 17:00~18:00・・・・・・・1,000円 18:00~19:00・・・・・・・1,250円 となり、合計で2,250円となります。 |
計算が面倒なために、残業時間を一律2割5分増しで計算していないでしょうか?
もしもそうならば、残業代は2,500円となり、250円多くなります。
「たった250円」でしょうか?
会社全体の1年間の総額を計算して考えてみてください。1時間当たり250円も(給与が高い人はもっと大きな額を)節約できるのですから、会社全体ならとても大きな金額になりませんか?
土曜・日曜が休日となっている会社で、土曜日か日曜日のどちらかだけ休日出勤したとしても、割増賃金は休日労働の率を適用する必要はありません。なぜなら、毎週1日または4週4日の休日が確保されていれば、法定休日に出勤したことにはならないからです。
休日に出勤しても法定休日に食い込んでいなければ、週40時間の法定労働時間を超えているかどうかだけに着目すればよく、超えていなければ通常の賃金、超えている部分については時間外労働として2割5分以上の割り増しとすればいいのです。
| Q. | A社は週休二日制(月~金の所定労働時間は8時間)の会社です。 ある労働者が土曜日に休日出勤(8時間勤務)した場合の残業代はいくらですか? なお、1時間あたりの単価は1,000円とします。 |
|---|---|
| A. | 土曜日の労働時間のすべてが週40時間を超えた労働に該当するため、 1,250円×8時間=1万円となります。 |
| Q. | B社は週休二日制(月~金の所定労働時間は7時間)の会社です。 ある労働者が土曜日に休日出勤(7時間勤務)した場合の残業代はいくらですか? なお、1時間あたりの単価は1,000円とします。 |
|---|---|
| A. | 土曜日の労働のうち5時間は週40時間以内となり、3時間のみが週40時間を超えた労働に該当するため、 1,000円×5時間+1,250円×3時間=8,750円となります。 |
| Q. | C社は週休二日制(月~金の所定労働時間は8時間)の会社です。 ある労働者が土曜日と日曜日に休日出勤(両日とも9時間勤務)した場合の残業代はいくらですか? なお、1時間あたりの単価は1,000円。日曜日は法定休日とします。 |
|---|---|
| A. | 土曜日は時間外労働の率となるため、 1,250円×9時間=11,250円 日曜日は休日労働の率となるため、 1,350円×9時間=12,150円 合計で23,400円となります。 |
この休日出勤の労働についても、法定休日かどうかであるにかかわらず、一律3割5分増しで支払っている会社もあると思われます。小さいようで実はとても大きな額となっている可能性が高い割増賃金ですから、きちんと計算して節約に努めましょう。
初歩的なことですが、休憩時間にも賃金を支払っていないか今一度確認してみてください。
1日の所定労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた時間です。
例えば、定時が9:00~17:00ならその間は8時間ですが、12:00~13:00の休憩があるならその1時間分を差し引いて所定労働時間は7時間となります。
お昼の休憩時間に電話番をさせるからと賃金を支払っているなら、それは休憩を付与していないことになり、労働基準法に違反してしまいます。
一斉に休憩が取れない職場においても、休憩を交代で取るための決まりを作り、労使協定を締結すれば問題ありませんので、休憩時間の分はちゃんと賃金を差し引くようにしてください。(一部の業種は一斉休憩の適用が除外されており、その場合は労使協定は必要ありません。)
労働基準法では、『労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない』と決められています。
つまり、8時間までなら8時間を超えないわけですから、45分でも良さそうなものです。しかし、一部の例外を除いて、通常は残業を含めて8時間以上働かせることが一般的でしょうから、1時間の休憩を与えておくのが無難といえます。
パートタイマーなど、労働時間が6時間以内である場合は、休憩を付与する必要はありません。
管理監督者には、労働時間等に対する規定が適用除外となるため、時間外労働手当や休日労働手当を支払う必要がありません。しかし、深夜労働については適用除外とはならないので、たとえ管理監督者であっても深夜残業を行った場合は深夜割り増しを加えた賃金を支払う必要があります。
ここで注意しておかなければならないのは、管理監督者の定義についてです。管理監督者には、次の要件が満たされている必要があります。
●労働時間の管理を自分で行っている(上司にいちいち伺いを立てない)
●その地位に見合った金額の賃金を得ている(適正な額の役職手当等が支給されている)
残業代を払いたくないために、名前だけの管理監督者という場合がよくあります。会社としては管理監督者としているつもりでいても、本人にその自覚がないため不満を持ち続けることになります。
もしも、こういった労働者に不払い残業で訴えられた場合、管理監督者に該当するか否かは実態によって判断されることになるため、会社は何年も遡って不払い残業代を支払わされることになりかねません。
これには十分注意してください。
法定労働時間は週40時間が原則ですが、一部の例外があります。商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で常時使用する労働者(パートタイマー、アルバイトを含みます)が10名未満の事業場については、週の法定労働時間が44時間となっています。
| 業種 | 該当するもの |
|---|---|
| 商業 | 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、出版業(印刷部門を除く)、その他の商業 |
| 映画・演劇業 | 映画の映写、演劇、その他興行の事業(映画制作、ビデオ制作の事業を除く) |
| 保健衛生業 | 病院、診療所、保育園、老人ホーム等の社会福祉施設、浴場業(個室付き浴場業を除く)、その他の保健衛生業 |
| 接客娯楽業 | 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業 |
この特例が適用される事業場であるにもかかわらず、週の法定労働時間を40時間だと思っている場合は、1週間に4時間もの不要な残業代(割増賃金)を支払っている可能性があります。
ただし、この特例を適用している場合は、『1年単位の変形労働時間制』や『1週間単位の非定型的変形労働時間制』を採用することができません。逆に言えば、これらを採用するには、たとえ特例が適用される事業場であっても週の法定労働時間は40時間となります。(『1ヶ月単位の変形労働時間制』や『フレックスタイム制』は採用できます)
ここに記載してある情報などを通して労働時間や割増賃金について正しい認識をお持ちになり、今まで行ってきた残業代の計算方法を変更したいとお考えになった場合は、不利益変更の問題にご注意下さい。
間違っていた労働時間の管理を正すことは、労働時間の延長に伴う相対的な賃金引下げといった労働条件の不利益変更をもたらす恐れがあります。労働条件の不利益変更は、会社の一方的な都合で勝手にできるわけではなく、そこには高度な合理性や労働者の同意が必要となるのです。
ですから、法的な問題を含め、社会保険労務士などの専門家と協議の上で変更していかれることをお勧めいたします。
残業代の削減は、割増賃金の計算方法を見直すだけでなく、変形労働時間制を初めとする各種の労働時間制の採用によっても実現可能となる場合があります。
各種労働時間制については別ページにて解説していますので、ぜひ参考になさってください。