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労基署対策の労務管理 ~是正勧告されないための5大重要ポイント~

 

適正な労務管理のための5つの重要ポイントを解説します。
このポイントさえ押さえておけば労働基準監督署の調査も恐くありません!

適正な労務管理が行われていますか?

職場のイメージ

あなたの会社の労務管理は、どのような状態でしょうか?
また、どこまでやっていればきちんと管理されているといえるのでしょうか?

労務管理が正しく行われていないと、労働基準監督署の調査を受けたときに『是正勧告』が行われます。

『是正勧告』は、事業所が正すべき箇所を指摘され改善を強いられるものです。
改善するには、多くのお金や時間が費やされ、経営者自身が心理的に追い込まれることにもなりかねません。

今まで間違った労務管理ばかりを行ってきた事業所が、急にあちらこちらを直せといわれても、対応に苦慮しますから、日ごろから適正な状態に近づけていくよう心がけておきたいものです。

 

労働基準監督署の調査とは?

労働基準監督署は、事業所に対し日々調査を行っています。

この調査は、事業所が労働基準法や労働安全衛生法などの法令等を遵守しているかをチェックするものですが、主に次のような二つの趣旨で行われていると言えます。

労働災害の防止という観点
長時間労働が行われていないかなど、事業所が精神的・身体的に過重となる労働を強いて、労働者の健康が損なわれてしまう恐れがないかをチェックします。
労働者の権利保護という観点
割増賃金の計算が正しく行われているかなど、事業所が労働者の権利を奪ったり不当に搾取したりしていないかをチェックします。
 

労働基準監督署の調査はいつやって来るのでしょうか?

調査が入るのは次の3パターンだといえます。

定期的な調査
労働基準監督署は、事業所に対する調査を定期的に行っています。この定期的な調査は、監督署にとっては定期に行うものではありますが、受ける側からするとその時期はまったく予測できず不定期です。
いつ調査に来られても大丈夫なように、普段から法令等の遵守を心がけておく必要があります。特に、長時間労働が懸念される業種や労働災害の発生率が高い業種は、調査の頻度が高いため要注意といえます。
労働災害発生時の調査
労働災害が発生したときにも調査は行われます。労働者が死亡したり、重症だったりと、重大事故であればあるほど高い確率で調査は行われ、事業主が労働災害を防止するための努力義務を怠っていなかったかを追求されます。
労働災害の防止にできる限り力を注ぎ、万全な体制を整えておく必要があります。
労働者の申告による調査
労基署の調査は、労働者が労働環境の実態を訴え出て、法違反の可能性が考えられるときにも行われます。労働者が申告したことを理由として会社がその労働者を不利益に取り扱うことは禁じられていますが、実際には守られない場合も多いため、調査は定期的なものを装って行われることもあります。
労働者を不当に取り扱って不満を溜めないよう、日頃から健全な職場体質を作るよう努力する必要があります。

 

是正勧告とは?

労働基準監督署の調査を受けると、労働時間や賃金の計算方法から各種備付帳簿に至るまで、さまざまなところをチェックされることになります。そして、もしも指導すべき法令違反等が見つかった場合には、それらを記載した『是正勧告書』によって指導が行われます。

『是正勧告』を受けた場合、事業所側の対応としては、指定された期限までに指摘された箇所の改善を行って『是正報告書』を提出します。

是正勧告書には、次のような記載があります。

「法条項に係る法違反(罰則のないものを除く。)については、所定期日までに是正しない場合又は当該期日前であっても当該法違反を原因として労働災害が発生した場合には、事案の内容に応じ、送検手続を取ることがあります。」

つまり、内容や程度によっては期限までに是正しないと送検手続が行われる可能性があるため要注意です。

 

送検手続が行われるとどうなるのでしょうか?

送検手続とは、一般に「書類送検」と呼ばれているものです。

書類送検されると新聞に掲載され取引先に知られて取引に影響が及んでしまうことも考えられます。
建設業では指名停止になる恐れがありますし、運輸業では運輸局に通報され営業停止等の処分を受けることも考えられます。

また、送検されると法人と法違反の実行行為者に前科が付くことになります。

実行行為者とは、小さい会社なら代表取締役でしょうし、大きい会社なら総務担当役員などです。役員でなくても権限があれば一般の労働者に前科が付くときもあります。
もちろん、送検されても正式裁判にして無罪を勝ち取れば前科は付きませんが、現実にはなかなかむずかしいのではないでしょうか。

 

『是正勧告』されないためのポイントとは?

いつ労働基準監督官が調査に来たとしても、是正勧告を受けないで済むにはどうしたらよいのでしょうか?

これには、労働基準法や労働安全衛生法など、労働法規に関する多くの項目について基準を満たすようにしなければなりません。

しかし、あまりに多くのことを一度に成し遂げるのは、とてもむずかしいですね。そこで、ある程度項目を絞り込んで対策を行うことにします。 労働基準監督署が調査を行う際に重視している次のようなポイントを押さえておけば、おのずと対策の方向性は見出すことができるからです。

労働基準監督署が行う調査の重点項目には、次のようなものがあり、

●労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について
●過重労働による健康障害を防ぐために

これらを踏まえて考えてみると、是正勧告を受けないための対策ポイントは次のようなものとなります。

1.労働時間の管理
2.割増賃金の計算方法
3.年次有給休暇の取得率
4.健康診断の実施状況
5.各種帳票の整備

 

1.労働時間の管理

最近は過労死やサービス残業などが社会問題としてクローズアップされてきています。

サービス残業を摘発され、多額の未払賃金を弁済する企業が毎月のように新聞に載っていますが、長時間労働等の過重労働に対しては以前に比べ取り締まりを強化しているようです。

次のような項目をチェックしてください。

労働時間を適正に把握しているでしょうか?
労働時間を適切に管理するため、タイムカードなどで労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録する必要があります。
36協定は届け出ているでしょうか?
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を越えて労働者に残業を行わせる場合、36協定(時間外労働、休日労働に関する協定書)の届出が不可欠となります。労災事故が発生したときなど、法定労働時間を越えて働かせているのに、36協定が出されていないと労働基準法違反として書類送検されてしまいます。
また、36協定には労働者代表の署名欄がありますが、この労働者代表の選出方法についても注意が必要です。事業主が指名した者や管理監督者は無効となります。
延長時間は適正でしょうか?(残業は多すぎないでしょうか?)
延長時間の限度基準については下記の表の通りです。基本的には、この限度枠を越えないように延長時間を設定するようにします。
期間 1週間 2週間 4週間 1箇月 2箇月 3箇月 1年間
限度時間 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間

※特定の時期にこれを越えることができるという設定(特別条項付き協定)も可能です。

 

2.割増賃金の計算方法

割増賃金の計算は、間違えやすいので要注意です。

残業や休日労働をした場合の時間外手当の計算方法が間違っていて、労働者に法律で決められた率の割増賃金がきちんと支払われていないと是正の対象となります。

法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を越える労働には2割5分以上、法定休日の労働には3割5分以上、深夜労働には2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。

所定外労働の種類 割増率 備    考
時間外労働 0.25 1日8時間を越える労働
休日労働 0.35 法定休日の労働
深夜労働 0.25 午後10時~午前5時の労働
時間外労働+深夜労働 0.50 0.25+0.25
休日労働+深夜労働 0.60 0.35+0.25
休日労働+時間外労働 0.35 0.60ではない

 

割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金の計算に関しては、基本給に各種手当を加えたものを基に算定することになりますが、次の手当は除きます。

●家族手当
●通勤手当
●別居手当
●子女教育手当
●住宅手当
●臨時に支払われた賃金
●1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、これらの手当は、各労働者の状況に応じて支払われるもののみが該当します。 一律定額なものは計算の除外対象とはなりませんので注意してください。

 

3.年次有給休暇の取得率

年次有給休暇の取得状況はどのような感じでしょうか?

年次有給休暇がまったく取得されていなかったり、取得率があまりにも低いと、指導の対象となります。

有給休暇の取得率が低いことは、法律違反ではありません。しかし、過重労働を防ぐという観点から考えると、労働者にある適度の休暇を与える必要があることはいうまでもありませんので、取得率が限りなくゼロに近いという状態は好ましいとはいえません。

そこで、取得率が低い会社には改善を促し、その結果を報告させることになります。

 

4.健康診断の実施状況

あなたの会社は、きちんと健康診断を行っていますか?

労務管理で意外に見落としがちなのが健康診断です。

危険有害業務等を行っている事業所は、特殊な健康診断をしなければならないことがわかっているため心配には及びませんが、問題なのは一般の事業所です。

常時使用する労働者に対しては、雇い入れ時や毎年の定期健康診断が法律で義務付けられており、また、深夜労働に従事する労働者に対しては、6ヶ月以内ごとに1回と厳しくなっています。
そして、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断の結果報告の義務も課せられていますので、これも忘れないようにしてください。

それから、健康診断は事業者が指定した医師、歯科医師の行うものを受けるのが基本ですが、他の医師、歯科医師の行う健康診断を受け、結果を証明する書面を提出することで、これに代えることもできます。何らかの事情で健康診断を受診しなかった労働者には、診断結果の提出を求めるようにします。

 

5.各種帳票の整備

最後のポイントは帳票類の整備です。事業者は次のような帳票・書類を整備しておかなければなりません。

労働者名簿
労働者の氏名、性別、生年月日、住所、雇入れ年月日、従事する業務の種類、履歴等を記載したもので、日々雇用される者を除くすべての労働者について作成しておかなければなりません。
賃金台帳
毎月の賃金の支払いを記録したものですが、給与明細書を綴ったものでは代用できません。賃金台帳には氏名、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、基本給、各種手当、社会保険料・所得税などの控除額などが記載されている必要があります。給与計算ソフトを使用していれば、簡単に出力できます。
出勤簿
タイムカードの導入が労働時間の管理を行う点で好ましいといえます。予算等の関係で導入していないなら、出勤日に印を押すだけのものでもいいので用意しておく必要があります。
就業規則
就業規則は、労働条件や服務規律など、会社のルールを定めた会社の法律です。常時使用される労働者が10名以上の事業場には作成義務があります。
労働条件通知書
労働者を雇い入れる際には、労働条件を書面により労働者本人に通知する必要があります。労働条件通知書には、勤務時間、休日、賃金・手当の額、賃金支払(締)日等が記載されています。

 

最後に

労基署の調査でチェックされる項目は、もちろんこれだけではありません。
ここに記載されていることを手始めとして、快適な職場環境作りを始めていただければと思います。

快適な職場環境を作り上げることで、労使間に協力的・友好的な関係を生み出せば、労基署へ申告される前に対策を打つことができるだけでなく、職場のモチベーションが高まることも期待できます。

適切な労務管理の実践は、事業所によってはなかなか難しい場合もあるかもしれません。
その場合は、第三者であり専門家である社会保険労務士の力を借りながら行ってみてください。

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