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残業代削減のための労働時間設定法

 

変形労働時間制やみなし労働時間制といった各種労働時間制を解説します。
職場に適した労働時間の設定は、残業代の削減効果が期待できます。

各種の労働時間制を活用しましょう

労働基準法には、法定労働時間を各事業場の業務の実情に合わせて変則的に設定することができる各種の労働時間制が定められています。

これらの制度を活用することで、企業の実態に即した労働時間の管理ができるようになります。労働時間の管理と一体となる残業代の問題についても、制度を上手に利用することで解決の道を探っていかれるとよいでしょう。

変形労働時間制を始めとする各種の労働時間制には、次のような種類があります。

変形労働時間制 1年単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制
1週間単位の非定型的変形労働時間制
みなし労働時間制 事業場外のみなし労働時間制
専門業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制
フレックスタイム制

制度ごとにさまざまな制約があるため、事業の実態に合わせて、これらのうちどの制度を導入することができるのかを考えていくことになります。

 

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、1ヶ月や1年といった一定の期間を平均して1週間の労働時間を40時間以下にすることにより、特定の日や週に8時間や40時間といった法定労働時間を超えた時間を所定労働時間として設定できる制度です。

次の図は、1年単位の変形労働時間制をわかりやすくイメージしたものです。

変形労働時間制のイメージ(1年単位の変形労働時間制)

これは、完全週休二日制で所定労働時間が1日8時間、週40時間の会社が1年単位の労働時間制を採用した場合の例です。

冬季(11月~2月)の4ヶ月間は繁忙期で1日の労働時間を長く設定しています。1日の所定労働時間を1時間延長し、9時間としてるため、この期間は毎週45時間となります。これに対し、夏季(5月~8月)の4ヶ月間は閑散期であるため、1日の労働時間を1時間短縮し、1日7時間、週35時間となっています。

冬季は法定労働時間を5時間ほど上回っているので、通常ならこの5時間分に対して割増賃金を加えた残業代の支払いが発生してしまうところですが、1年を通して所定労働時間を平均化すると週40時間になるため、所定の手続き(労使協定の締結および労働基準監督署への届出)を踏めば残業代や割増賃金は発生しません。

 

変形労働時間制の種類は3つ

変形労働時間制には、1年単位、1ヶ月単位、1週間単位の3種類があります。

これらは単に変形させる期間の長さが違うだけでなく、採用できる業種、設定できる労働時間の上限、労働基準監督署への労使協定の届出義務の有無など、制度ごとに特徴が異なります。

種類 業種 期間 労働時間の上限 労使協定
1年単位の
変形労働時間制
制約なし 1ヶ月を超え
て1年まで
2ヶ月、3ヶ月
でもOK
1日10時間まで
1週52時間まで
1年間2085時間、280日まで
1週48時間を超える週は連続3週まで
連続勤務は6日間まで
労基署への
届出が必要
1ヶ月単位の
変形労働時間制
制約なし 1週間を超え
て1ヶ月まで
2週間、3週間
でもOK
なし 就業規則に定め
れば届出は不要
1週間単位の
非定型的
変形労働時間制
小売店、旅館、
料理店、飲食店で
従業員30人未満
1週間まで 1日10時間まで 労基署への
届出が必要

 

変形休日制への応用

所定労働時間を1日8時間としている会社では、1週間に2日以上の休日がないと週40時間という法定労働時間の枠を超えてしまいます。しかし、「休日の設定にバラつきがあっても1ヶ月に8~9日の休日があり、平均して週40時間以内に収まっている」といった場合は、『1ヶ月単位の変形労働時間制』を採用でき、ムダな残業や割増賃金の発生を最小限に抑えることが可能です。

変形休日への応用例(1ヶ月単位の変形労働時間制の例)

このような変形休日制への対応は、『1ヶ月単位の変形労働時間制』だけでなく、『1年単位の変形労働時間制』においても応用が可能です。

1年間は365日=7日×52週+1日ですから、休日として年間に2日×52週+1日=105日を与えれば、法定労働時間である週40時間をクリアすることができます。

隔週で週休二日制を採用している会社など、完全週休二日制でないところであっても、祝祭日を休日に設定しているなら年間休日は105日を超える可能性が十分に考えられますから、一度年間休日カレンダーを作ってみて確認してみてください。週40時間を1ヶ月単位で達成できなくても、1年で可能なら『1年単位の変形労働時間制』が採用できます。

 

シフト制勤務への応用

早朝から夜間にかけて営業している店舗や夜勤がある職場などでは、早番・遅番の交代勤務を採用しているところも多いと思います。こういったところでは、「昨日は8時間勤務、今日は5時間勤務、明日は10時間勤務」といった具合に労働時間と毎日のように変わり、休日も不定期だったりします。

このような変則的な勤務体系には、1ヶ月単位の変形労働時間制で対応されるとよいでしょう。勤務時間や休日が変則的であっても、所定労働時間が1ヶ月を平均して週40時間以内に収まるようにシフトを組めばよいのです。

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用すれば、残業代が節約できるだけでなく、残業時間を計算するのも楽になります。

1ヶ月は28日間、29日間、30日間、31日間の4パターンありますが、週40時間以内となるためには1ヶ月の所定労働時間を次の計算で求められる時間数以内に設定しシフトを組めばよいのです。

28日の月・・・・・40時間×28日÷7日=160時間
29日の月・・・・・40時間×29日÷7日≒165.71時間
30日の月・・・・・40時間×30日÷7日≒171.42時間
31日の月・・・・・40時間×31日÷7日≒177.14時間

残業代の計算は、毎月この時間を超えた分について支払えばよく、1日ごとに計算する必要がありません。

 

みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、労働時間が算定しにくい労働について、所定労働時間あるいは通常労働時間となる時間を労働したものと『みなす』制度です。

この制度を採用すれば、一定の仕事をこなすのにどれだけ時間がかかっても、また、ぜんぜん時間がかからなくても、所定の労働がなされたものとみなすことになります。
実際の労働時間に関係なく、一定時間の労働の提供があったものとするため、残業代の削減にもつながります。

営業職など事業場外の仕事が多く労働時間の把握が難しい場合や、専門職など労働者の裁量に労働時間の配分を任せる場合など、次の3種類に分類されます。

みなし労働時間制の種類 特徴
事業場外のみなし労働時間制 営業職など事業場外での仕事が多く、毎日の労働時間の把握がしにくい労働者に適用できます。
専門業務型裁量労働制 専門性の高い特定の業務を行う労働者に適用できます。(後出の表を参照)
企画業務型裁量労働制 企画・立案・調査および分析の業務を行う労働者に適用できますが、一定期間以上の経験年数が必要になるなど、条件がかなり限られています。

この3種類のうち、多くの会社で用いられている制度は『事業場外のみなし労働時間制』と『専門業務型裁量労働制』の2種類です。

『企画業務型裁量労働制』は、専門職でないホワイトカラーの人たちを想定した裁量労働制ですが、導入用件がかなり限定されており、中小企業ではなかなか浸透しにくいといった現状です。

ここでは、先の2つの制度について解説します。

 

事業場外のみなし労働時間制

事業場外労働のイメージ

事業場外のみなし労働時間制は、営業マンのように事業場の外に出て働いている時間が多い職種に採用できます。朝、会社に寄らずに直接取引先やお客様のところへ向かったり、また、帰りも会社に寄らず直帰する場合があったりと、労働時間をきちんと管理するのが難しい場合には、この制度の導入が有効です。

みなし労働時間制の考え方は、例えば、1日の労働時間を8時間とみなした場合、「実際に働いた時間が10時間であっても、また5時間であっても、8時間働いたことになる」というものです。

このみなし労働は、事業場外労働に対して適用できるので、事業場内と事業場外の両方の労働が存在する場合には、「事業場内3時間、事業場外5時間」といったように、それぞれ分けて考える必要があります。

事業場外労働について、上記のように5時間とみなしてあれば、たとえ実際に10時間の労働があったとしても、それは5時間の労働とされるため、残業代は発生しません。しかし、事業場内の3時間については、その時間を超える労働があれば残業代の支払いが発生するため、この点には注意が必要です。

事業場外のみなし労働時間制を採用するには、労使協定を結び労働基準監督署へ届け出る必要があります。ただし、みなし労働時間が1日8時間という法定労働時間の枠内であれば、労働基準監督署への届出は不要となります。

この制度の導入は、労働時間を把握できないことが大前提となりますので、社員の中に労働時間を管理するものがいる場合や、携帯電話などで指示を受けながら仕事をする場合には採用できません。(携帯電話を緊急時の連絡用として持っているだけの場合には問題ありません。)

 

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、専門的な知識を用いて業務を行う一定の職種について採用できるもので、次の職種のどれかに該当する必要があります。

1. 新商品・新技術の研究開発の業務 11. 弁理士の業務
2. 情報システムの分析・設計の業務 12. システムコンサルタントの業務
3. 取材・編集の業務 13. インテリアコーディネーターの業務
4. デザイナーの業務 14. ゲームソフト創作の業務
5. プロデューサー・ディレクターの業務 15. 証券アナリストの業務
6. コピーライターの業務 16. デリバティブ商品開発業務
7. 公認会計士の業務 17. 二級建築士または木造建築士の業務
8. 弁護士の業務 18. 税理士の業務
9. 一級建築士の業務 19. 中小企業診断士の業務
10. 不動産鑑定士の業務    

この制度では、専門性の高い業務が対象となるため、業務の遂行方法や時間配分を労働者自身に任せて会社が指示しない方が業務の効率が高まるといった場合に有効です。

この制度の導入についても、会社と労働者との間で労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

 

導入する際の注意点

みなし労働時間制における『みなし時間』の設定は、労働時間の平均値を割り出して決定するとよいでしょう。

普段から多くの残業をしているのに、みなし時間が所定労働時間と同じになってしまっていると、多くの労働者に不満が募り、事業場全体のモチベーション低下といった最悪の事態になりかねません。

とにかく、実態に即さず残業代の削減のみに主眼を置いていると、トラブルの元になりかねないので注意が必要です。労働者の立場も踏まえて、バランスの取れた時間設定を行うように心がけてください。

 

フレックスタイム制とは

労働者に始業および終業の時刻の決定を委ねることによって、労働者の生活と仕事との調和を図りながら効率的に働くことを目的としたのがフレックスタイム制です。

労働者にとっては、自分の好きな時間に出社/退社できるので、通勤ラッシュから解放されたり、プライベートな時間をできるだけ犠牲にしなくて済んだりと、いくつかのメリットが発生します。
一方、会社としても業務の繁閑に応じて所定労働時間を変化させることができれば、余分な残業代を抑制できるというメリットが発生します。

労働者が責任と自覚を持ち、労働時間を自身の裁量で調節することで、フレックスタイム制は労使相互にとって理想的な制度となります。

フレックスタイム制のイメージ

 

2種類の時間帯の設定

フレックスタイム制においては、次の2種類の時間帯をそれぞれ設定できます。

●フレキシブルタイム・・・・・労働者が選択により自由に労働することができる時間帯 
●コアタイム・・・・・労働者が必ず労働しなくてはならない時間帯 

フレキシブルタイムやコアタイムは必ず設定しなくてはならないというものではありませんので、必要に応じて設定するようにします。フレキシブルタイムは、24時間いつでも出退社をしてもいいという会社を除いて、通常は設定するようにします。コアタイムは、会議や朝礼などで社員が集まる必要のある場合に設定します。

 

フレックスタイム制導入の注意点

フレックスタイム制は、就業規則への記載や労使協定の締結は必要ですが、労働基準監督署への届出が必要なく、簡単に運用を始めやすい制度です。しかし、簡単に考えすぎてしまって守るべき制約事項を無視してしまわないよう、注意してください。

残業の取り扱いは?
フレックスタイム制では、清算期間(1ヶ月以内の一定期間のこと、通常は1ヶ月です。)における総労働時間を定めて運用を行います。この時間を超えて労働がなされた場合は、残業として時間外手当を支払います。もちろん、法定労働時間を超えた場合や深夜労働を行った場合には、割増賃金の支払義務が発生します。 
労働時間が不足したときは? 
労働時間に過不足が出た場合は、基本的にはその都度、清算を行うことになります。ただし、労働時間に不足がある場合で、その不足分を次の期間に加えても、その期間の総労働時間が法定労働時間を超えなければ繰り越すことが可能です。 
退社時刻のみのフレックスはできません! 
フレックスタイム制は、始業および終業時刻のどちらも労働者の決定に委ねなくてはなりません。ですから、「朝は定時に出社して欲しいけど、退社時刻はバラバラでいいからフレックスにしたい」といったことは認められません。 

 

まとめ:各種労働時間制を導入する際には

ここに紹介した各種の労働時間制は、1日8時間、1週40時間という法定労働時間を弾力的に運用することで、企業が事業の実態に合わせた労働時間を設定することができるように歩み寄られた制度といえます。

これらの制度は、便利で、かつ、残業代の抑制効果があるなど、多くのメリットがありますが、導入には注意も必要です。

 

制約事項の遵守

注意すべき点の第1点目は、これらの各種制度にはいくつかの制約事項があり、それを守らねばならないということです。

法律を無視して、自社にとって都合のよい勝手な解釈で制度を導入してしまうと、無用なトラブルを発生させかねません。各企業の実情に合わせて適切な制度を導入できるよう、法に熟知した専門家と協議の上、導入を検討されることをおすすめいたします。

不利益変更はダメ

第2点目の注意点は労働条件の不利益変更の問題です。

各種の労働時間制を導入することや労働時間の管理の仕方を変更することが、労働時間の延長に伴う賃金の相対的な引き下げとなる場合も大いに考えられます。

これは、労働者にとって労働条件を不利益に変更させることになるため、会社がやりたいからといって一方的にやれるわけではありません。(無理やり行うと後で訴えられたりしたらとても面倒なことになり、残業代の削減どころではなくなってしまうかもしれません。)

労働契約の変更に当たっては、会社側の一方的な変更は許されず、労働者の同意を得ることや、その合理性が確保される必要があります。

また、制度の導入に労使協定の締結が必要となるものは、そもそも労使協定が締結できなければ採用することすらできません。『1年単位の変形労働時間制』も『事業場外のみなし労働時間制』も、労使協定を締結できて始めて導入できるものですから、労働者に不利益変更を理解し、受け入れてもらう必要があります。

業務改善と併せて行う

新制度の導入に当たっては、労使間で業務改善や業務合理化について話し合い、その手段の一つして進めていかれるとよいでしょう。

そうすれば、制度の導入に労働者の理解と協力を得られやすいだけでなく、労働意欲の高まりや生産性の向上といった副次的な効果も同時に期待できる可能性が高くなります。
不利益変更を上から一方的に押し付けるといったやり方ではなく、ぜひ労働者を巻き込んで制度の導入を進めてみてください。

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